こんにちは、土肥板金工業です。
独特の深みのある光沢を持ち、経年変化によって使うほどに味わいが増していく「銅板」は、インテリアや建築の分野で非常に人気の高い金属素材です。
しかし、デザイン性が高く魅力的な反面、銅板加工は私たち板金職人にとって繊細な技術を要する分野でもあります。
特に難易度が高いのが、寸分の狂いもない正確な角度を出す「曲げ加工」です。
今回は、美しい製品を生み出すために、職人がプレス機の前でどれほどの手間をかけているのか。
土肥板金工業の銅板曲げ加工の現場を3つのポイントに分けてご紹介します。
① 一発では決まらない!銅板の「曲げ加工」を阻む2つのクセ
銅板加工において、狙った通りの正確な角度を一発で出すのは至難の業です。
銅という金属が持つ柔らかさは加工しやすそうに見えますが、いざ「曲げ」の工程に入ると、以下の2つの大きなクセが職人を悩ませます。
・金属の跳ね返り「スプリングバック」
銅板を機械でグッと曲げたとき、圧力を解放すると、金属自体の弾性によってわずかに元の形に戻ろうとする現象(スプリングバック)が起きます。
例えば「90度」の角度に仕上げたくて機械をぴったり90度に設定して曲げても、圧を抜いた瞬間に91度や92度に広がってしまうのです。そのため、あらかじめ跳ね返る分を計算し、あえて深く曲げ加工を行う必要があります。
・曲げるほどに硬くなる「加工硬化」
もう一つの大きな特徴が「加工硬化」です。銅板は、力を加えて変形させると、その部分が急激に硬くなるという性質を持っています。「一回曲げてみて角度が足りなかったから、もう一度少しだけ曲げ直そう」と思っても、すでに一度硬くなっているため、二度目は思い通りの形になってくれません。つまり、やり直しが極めて難しい「一発勝負」の加工なのです。
その日の気温や、材料である銅板の個体差によってもこの度合いは変化するため、マニュアルや数値データだけに頼ることはできません。
② 何度も、何度もテストする!銅板曲げの正確性を生む下準備
では、やり直しのきかない一発勝負の銅板曲げ加工で、どうやって完璧な角度を生み出すのか。
その答えは、「本番の加工に入る前に、何度も何度もテスト(試し曲げ)を繰り返すこと」にあります。
こちらの写真は、実際の加工に入る前に、製品と同じ銅板の端材を使って作成したテストピース(試作品)たちです。


緩やかなアール(曲線)を描きながら、ピシッと直線的に立ち上がる銅板。その手前には、角度を測定するためのプロトラクター(角度計)が置かれています。
一度曲げては角度を測り、数値を計算して機械の圧力をコンマ数ミリ単位で調整し、また別の銅板の端材を曲げる。
私たちは、この加工プロセスを納得がいくまで、本当に何度も何度も繰り返します。
高価な銅板の本番材料を無駄にしないため、そして何より、お客様の手元に届く製品を完璧なクオリティに仕上げるために、この事前の「試し曲げ」に最も多くの時間と神経を費やしています。
③ 動画で見る、銅板曲げ
ここで、職人が実際にプレスブレーキ(折り曲げ機)に向かい、銅板のテスト曲げ加工を行っている動画の様子をご紹介します。
ここで注目していただきたいのが、銅板の下に敷かれている「布」です。
銅板は表面が非常に傷がつきやすいデリケートな素材です。
プレス機の金属の刃が直接当たると、表面に修復不可能な傷がついてしまいます。
そのため、加工する部分に厚手の布を挟み、銅板特有の美しい表面を優しく保護しながら、正確に圧力をかけて曲げていきます。
そして加工が終わった直後、職人はすかさずプロトラクターを当てて仕上がりの角度を厳密にチェックします。
この動画に収められているのはほんの数十秒ですが、この一連の動作の中に、職人が長年培ってきた「手の感覚」と「銅板という素材への深い理解」がすべて凝縮されています。
まとめ:目に見えない「曲げ」へのこだわりが、土肥板金の品質を支える
お客様にお届けする完成品には、繰り返したテストの跡は一切残りません。
製品として見えるのは、美しい、寸分の狂いもない完璧な直線と角度を持った銅板製品だけです。
しかし、その完璧な美しさの裏側には、今回ご紹介したような泥臭い準備、妥協なきテストピースの山、参考写真や動画にあるような職人の微調整があって初めて形になるものです。
目に見えない部分にこそ手間を惜しまない。
これこそが、私たち土肥板金工業が誇る銅板加工のプライドです。
店舗のカウンター、こだわりのインテリア什器、建築のアクセントパーツなど、金属加工において妥協したくない理想の形がある方へ。
「こんな複雑な形状、銅板の曲げで実現できるだろうか?」 そう思われるようなアイデアも、ぜひ一度お聞かせください。
その他銅板加工関連についての記事はこちら:銅板の溶接とバイブレーション加工
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