こんにちは!京都の老舗板金屋、土肥板金工業です。
5月も後半に入り、京都はすでに初夏の訪れを感じる暑さが続いていますね。
みなさんは、新い製品開発・設計時や、加工会社に部品を発注するとき、「ここの溶接、どの方法がベストなんだろう?」と迷ったことはありませんか?
特に、仕上がりの美しさや精度が求められる精密板金では、溶接の選び方ひとつで、製品のクオリティもコストも大きく変わってきます。
図面や見積書でよく目にする代表的な加工法といえば、「TIG(ティグ)溶接」と「レーザー溶接」です。
「名前は知っているけれど、違いがわからない」
「うちの製品にはどちらが適切なのか」
「実際の事例を見て参考にしたい」
土肥板金工業がTIG溶接とレーザー溶接の決定的な違いを、実際の施工例を交えながらプロの目線で分かりやすく解説します。
1. TIG溶接とレーザー溶接の根本的な「違い」とは

この2つの加工方法の一番大きな違いは、金属を溶かすための「熱の与え方(アプローチ方法)」にあります。
- TIG溶接: 電気の力(アーク放電)を使って、金属を「面」や「線」でじっくり溶かし合わせる。
- レーザー溶接: 強いレーザーの光を極小の「点」にギュッと絞り込んで、一瞬でピンポイントに溶かす。
この「じっくり」か「一瞬」かという熱の伝わり方の違いが、溶接スピードだけでなく、板金加工の永遠のテーマである「熱による歪み(ひずみ)」や「強度の違い」になって現れてきます。
| 比較項目 | TIG(ティグ)溶接 | レーザー溶接 |
| 熱の与え方 | 電気(アーク)で「面・線」をじっくり溶かす | レーザー光で「極小の点」を一瞬で溶かす |
| 熱影響(歪み) | 熱が全体に伝わりやすく、薄板は歪みが出やすい | ピンポイント加熱のため、歪みが極めて少ない |
| 溶接スピード | 比較的ゆっくり(職人の手技による) | 圧倒的にスピーディー(TIGの数倍) |
| 溶接の見た目(ビード) | 波状の跡(ビード)が太めに出る | 針の先のように細く、非常に美しい仕上がり |
| 後処理(仕上げ) | グラインダー等で削って仕上げる手間が必要 | ビードが細くきれいなため、仕上げの手間がほぼ不要 |
| 強度・気密性 | 深くまでガッチリ溶け込むため、非常に高い | TIGに比べると浅めだが、精密板金には十分な強度 |
| 対応できる金属 | ほぼすべての金属(難易度の高い銅などもOK) | 主にステンレス・鉄・アルミ(隙間に弱い) |
| 前工程への要求精度 | 多少の隙間(〜数ミリ)があっても溶接棒でカバー可能 | 0.1mmでも隙間があると光が抜けるため、高精度な曲げが必要 |
| 最適な用途 | 厚板、タンク・配管(水漏れ厳禁)、強度が最優先の構造物 | 薄板(0.5〜1.5mm)、外観重視の筐体、量産部品 |
2. 万能で力強い!「TIG溶接」の特徴

TIG溶接は、板金加工の世界では最もスタンダードな工法です。
それだけに、職人の「手の感覚」や技術の差が一番出やすい、奥が深い溶接でもあります。
・メリット
ガッチリついて漏れない:
金属の奥深くまでしっかり溶け込ませるので、強度がバツグンです。水や空気が漏れてはいけないタンクや配管、強度が命の構造物には、TIG溶接が一番信頼されています。
どんな金属でも対応可能:
鉄やステンレスはもちろん、熱がすぐに逃げてしまって溶接が非常に難しい「銅」や、酸化しやすいアルミなど、ほぼ全ての金属をくっつけることができます。
・デメリット
じっくり熱をかける分、金属全体に熱が伝わりやすいので、特に薄い板を溶接すると「反り」や「歪み」が出やすくなります。
・対策
これを防ぐために、弊社の職人たちは溶接する順番を工夫したり、専用の固定治具を手作りしたりして、長年のノウハウで歪みを抑え込んでいます。
3. 早くてキレイ!「レーザー溶接」の特徴

レーザー溶接は、光のエネルギーを集中させて、これまでの溶接の常識をひっくり返した最新の技術です。
・メリット
歪みがびっくりするほど少ない:
狙ったところだけを一瞬で溶かすので、周りの金属に熱が伝わりません。歪みが出ると致命傷になる「薄板の精密板金」では、圧倒的な威力を発揮します。
とにかくスピーディー:
直線的な溶接スピードが非常に速いです。溶接の跡(ビード)も針の先のように細くてキレイなので、後からグラインダーで削って仕上げる手間がほとんどなく、短納期化にも繋がります。
・デメリット&注意点
レーザーの光がとても細いので、金属と金属の間にほんの0.1mmでも「隙間」があると、光がすり抜けてしまって上手くくっつきません。そのため、溶接の手前にある「切断」や「曲げ加工」の段階から、一ミリの狂いもないカンペキな精度が求められます。
4. 土肥板金工業での施工例
【施工例①】屋内パーテーションに使用する、アルミ製フレームのジョイント部分(レーザー溶接)


【施工例②】アルミ台座(TIG溶接)


5. 使い分けの基準のまとめ
「うちの図面ならどっちだろう?」と思ったときは、この基準を参考にしてみてください。
- TIG溶接がおすすめ:
- 板が厚くて、頑丈さや水漏れしない気密性が一番大事なとき
- ちょっと複雑な立体形状や、オーダーメイドの1点モノ
- ステンレス、鉄、アルミ、そして難易度の高い「銅」の加工
- レーザー溶接がおすすめ:
- 0.5mm〜1.5mmくらいの薄い板で、絶対に歪ませたくないとき
- 溶接の跡を目立たせたくない、外観重視のカバーや筐体
- 同じ形のものをたくさん、スピーディーに作りたい量産品
まとめ:両方の強みを「いいとこ取り」できる
精密板金のクオリティは、高い機械を入れるだけで決まるわけではありません。
レーザー溶接のスピードを活かすための正確な曲げ精度や、レーザーの光が届かない奥まった場所をカバーする職人のTIG溶接テクニックがあって初めて、本当に良い製品ができあがります。
土肥板金工業では、職人のTIG溶接技術と、最新の「レーザー溶接設備」の両方を自社に備えています。
ひとつの製品の中でも、「強度がほしい土台はTIG溶接で」「キレイに見せたい表面パネルはレーザー溶接で」といった、お互いのいいとこ取りをした設計のご提案が可能です。
「今の外注先だと薄板が歪んでしまって、組み立てに苦労している」
「ステンレスや銅の製品、設計の段階から相談に乗ってほしい」
そんなお悩みは、ぜひ京都の土肥板金工業へお気軽にご相談ください。
図面やアイデアの段階から、現場のプロが一緒になって最適なモノづくりをサポートさせていただきます!
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